【レアアース採掘】本当に大丈夫?深海採掘の問題を考える

建材、紙、衣料、食料、エネルギー etc…
私たちの暮らしは、自然環境から得られる資源によって支えられています。

しかし、人口増や「より便利に・より贅沢に」といった欲から来る乱開発や搾取等により、世界規模の環境破壊を引き起こしてしまっています。

レアアース(レアメタルと呼ばれる希少金属の一部)採掘もその一つ。スマートフォンやテレビなど、日常生活を支えるデジタル機器に使われるレアアースですが、環境汚染や国際情勢の緊迫化など、あらゆる問題を有しています。

そんな中、現在、日本政府は海底におけるレアアース泥(レアアースを含む海底鉱物資源)の採掘を推進しています。

果たして、問題はないのでしょうか?今回は『深海採掘』というキーワードに着目して考えていきます。

深海採掘について

深海採掘とは、一般に水深400メートルから6500メートルまでの海底を掘り、資源を採ることをいいます。今、日本が推進しているレアアース採掘は、東京都心から約1950キロメートル離れた南鳥島沖の海底6000メートルが対象です。1.2)

出展:小笠原村

レアアースは地上での採取が主流であり、この深さでの採掘は世界初となります。この採掘場所は日本の排他的経済水域(EEZ)内であり、深海底資源の管理や規制を担う国際海底機構(International Seabed Authority, ISA)が制約できる範囲ではありません。3)

国際海底機構(ISA)

公海域の深海底鉱物資源を、海洋に関する権利・義務などを包括的に規定した多国間条約である「国連海洋法条約」のもと一元管理する国際機関

深海採掘の問題点

今回は、深海採掘により起こり得るリスクを4つ記載します。


●深海生物や環境への直接的影響

深海における採掘作業が、海底環境や深海生物に多大な影響を及ぼすことが、研究により明らかになっています。4)

●長期的な生態系への影響

生態系は、多種多様な生きものたちの複雑な関係性によって構成されます。海底での開発は、いずれ深海生物だけでなく、繋がり合う多様な海洋・陸上生物(人間含む)へ負の影響をもたらす可能性があります。

日本では南鳥島でのみ繁殖が
確認されているシロアジサアシ

●世界の動向からの逆行

環境への影響が大きすぎるとの考えから、世界中で深海採掘に関する懸念の声が上がっています。
多くの研究者やWWFなどの団体が、深海採掘に「待った」をかけています。5)国単位では、コスタリカやイギリス、フランス、ギリシャなど世界40か国が現在「反対」の姿勢を見せています。6)

ノルウェーでは、2025年に深海採掘計画を策定していましたが、国内外で環境問題を訴える声が上がりました。開発に反対する政党による、推進派への交渉も相まって、採掘計画は停止となりました。(次期選挙までの4年間の延期)7)

●法整備やガイドラインが不明瞭

深海採掘に関する日本の法律は不明瞭であり、環境影響評価法の対象にもなっていません。8.9.10)深海採掘の影響評価については未だ「検討」段階とされています。11)様々な専門家によって構成されるISAでさえ、公海における深海採掘に関する法典を作成中の状態であり、環境影響評価の規定についても草案段階です。12)


このように、深海採掘には様々なリスクや不安要素が伴います。

深海採掘による資源確保の代替策

深海採掘による生態系や環境への負荷を懸念し、世界中で対策がとられています。13)

・鉱物資源(以下、資源)を必要とする製品の長寿命化
・資源のリサイクルにより、新たに採掘を必要としないサーキュラーエコノミー(循環経済)の確立
・製品に含まれるリサイクル資源の最低含有量を規定する(EUバッテリー規則:2031年施行予定)

等といった方法があります。ルノーやアップルなど世界的なブランドも、独自の目標を掲げ、新たな資源を必要としない社会を目指しています。

まとめ

日本が推進しているレアアースの深海採掘により、どれだけの自然環境や生きものたちが失われてしまうのか。その影響力は計り知れません。“わからない”からこそ、これ以上手を入れるべきではありません。

脱炭素への期待も寄せられるデジタル化ですが、『自然にやさしい』『サステナブル』の言葉の裏で、自然環境が破壊され、生きものたちが犠牲となってしまっては、本末転倒です。

AIが急速に進化し、電子機器への依存度が増す今。
私たちはこの“便利さ”に疑問を持つ必要が
あるのではないでしょうか

レアアース採掘は、私たち市民も責任を担っています。

・事業の動向に関心を寄せ続けること(政府の動きを注視する、声を届ける等)
・暮らしの在り方を見直すこと(物を長く大切に使う、本当に必要か考える等)

ひとりひとりの行動が、自然やそこに住む生きものたちを守り、真に持続可能な社会へのカギとなります。

Muiより

生息地の減少・汚染や乱獲、気候変動などにより、世界中の野生動物たちが深刻な危機に瀕している現代。過去50年で野生動物の個体数は約68%減少したとされています(2020年時点)。この危機的状況から脱却するには、人間活動の見直しが極めて重要です。

自然環境なくして、人は生きていけません。そして、自然環境の構成・維持に欠かすことが出来ないのが、全ての野生動物たち。つまり、動物たちを守ることは、私たち人間の暮らしを守ることなのです。

何より動物たちは、それぞれがかけがえのない存在であり、個々の生涯を生きています。私たちと何も変わりません。

持続可能な未来のため、思いやりある社会のため、本当に大切にすべきは何か?私たちは見極める必要があります。


参考:
1)JAMSTEC「南鳥島EEZ海域でのレアアース泥採鉱システム接続試験の実施について」https://www.jamstec.go.jp/j/about/press_release/20251223/

2)JAMSTEC/SIP「海底レアアース資源はどこにある?~レアアースの成因研究、調査の歴史と課題~」https://www.jamstec.go.jp/sip3/j/topics/20251212/index.html
3)ISA「About ISA」https://isa.org.jm/about-isa/
4)BBC「Deep-sea mining tests impact over a third of seabed animals - scientists」https://www.bbc.com/news/articles/cedx2p8gnx9o
5)DSCC「Voices calling for a moratorium」https://deep-sea-conservation.org/solutions/no-deep-sea-mining/momentum-for-a-moratorium/scientists/
6)DSCC「A growing wave of voices are speaking out against the looming specter of deep-sea mining.」https://deep-sea-conservation.org/solutions/no-deep-sea-mining/momentum-for-a-moratorium/
7)United Nations「UN experts commend Norway decision to postpone deep-sea mining licensing」https://www.ohchr.org/en/press-releases/2025/12/un-experts-commend-norway-decision-postpone-deep-sea-mining-licensing
8)経済産業省「深海底鉱業暫定措置法」https://laws.e-gov.go.jp/law/357AC1000000064
9)菅野直之「UNCLOSにおける環境影響評価実施義務の具体化」https://www.ir.nihon-u.ac.jp/pdf/research/publication/02_41_02.pdf
10)井上真由美「海洋鉱物資源開発に係る国際動向及び国際法について」https://www.rpsj.org/wp-content/uploads/2024/05/71-1-5inoue.pdf
11)経済産業省「海洋エネルギー・鉱物資源開発計画」https://www.meti.go.jp/press/2023/03/20240322001/20240322001-1rr.pdf
12)ISA「The Mining Code」https://isa.org.jm/the-mining-code/standards-and-guidelines/
13)Exponential Roadmap Initiative「Urgent for Nations to Press Pause on Deep Seabed Mining」https://exponentialroadmap.org/urgent-for-nations-to-press-pause-on-deep-seabed-mining/

その他の参考文献:
日本財団「南鳥島沖海底に眠る2.3億トンもの海底鉱物資源。そして「暗黒酸素」とは?https://www.nippon-foundation.or.jp/journal/2026/119353/sustainable

Fair Finance Guide Japan「海より深い欲望https://fairfinance.jp/media/55ppshcd/ffgj-deepsea-mining-2022.pdf
山崎哲生「海底鉱物資源利用の現状と将来展望https://www.jstage.jst.go.jp/article/lca/18/4/18_220/_pdf

(最終閲覧日:2026年3月1日)