野生動物を“飼う”ということ②

法が変われば社会は変わる?

前回のコラムでは、野生動物関連法の曖昧さについて触れました。

現在、環境省では、犬猫以外の哺乳類・爬虫類の飼育管理基準の検討が進められています。具体性のある基準が確立されれば、状況は改善するでしょう。

今すでに飼育下にある野生動物たちの、QOL向上は急務です。忖度だらけ・耳障りの良い形だけのものではなく、動物を第一に考えた厳正な基準となることが強く望まれます。

野生動物を飼うということ

そもそも野生動物は、「飼いたいから」飼育しても良いものなのでしょうか。

彼らは本来、自然の中で多種多様な生きものたちと共に暮らしています。当然ながら、ケージの中が彼らの生息地ではありません。
(傷病鳥獣を救護する場合でも、野生復帰が難しいなどの事情がない限りは、リリースを目標とすべきだと考えます)

私たちは野生動物について多くを知りません。ただ、絶対的なのは、彼らは“自然の中で、他者と関係しあいながら生きる生きもの”であるということ。「どうすれば飼えるか」ばかりでいいのでしょうか。

何より、彼らには、私たちと同じように個々の性質や感覚、感情があります。果たして、ガイドラインでまとめられるほど単純なものなのでしょうか。

野生動物が大好きな皆さんへ

ここからは、野生動物の飼育に関心を持たれている皆さんにお願いしたいことです。

展示・販売施設やメディアが、野生動物の飼育ブームに火を点けたかもしれません。ですが、火が灯り続けているのは、ニーズがあるから。「ペット」目的で輸入される野生動物は、推定40万頭1)にも上ります(2021年)。これだけの動物たちが、私たちの娯楽のために連れてこられています。

密猟・密輸も後を絶ちません。

野生動物を飼いたい・側にいてほしいという思いの根底には、“好き”の感情があると思います。
ぜひ、その心からの想いを持って、彼らの本来の暮らしを尊重してください。

娯楽のため、生息地から離されたり、繁殖させられ続ける野生動物たち。それが彼らにとって自然ではないこと、苦しみ多いことを忘れないでください。

開発や汚染などの人間活動により、野生下の動物たちも苦境に立たされています。彼らが平和に暮らしていけるよう、配慮と思いやりの気持ちもって行動すること、行動を見直すことが、何より素晴らしい“好き”の形だと思います。

自然の中で自由に暮らす彼らを、あたたかく見守れる社会にしていきませんか?

1) 厚生労働省 輸入動物統計及び財務省 貿易統計に基づく推定値