【動物関連法規】鳥類・爬虫類・犬猫以外の哺乳類を扱うペットショップから見る、動愛法の問題点


今春から、私たちは兵庫県下のあるペットショップへの調査・要望を続けてきました。この業者では、鳥類と魚類が多く、哺乳類(犬・猫を除く)や爬虫類も取り扱われています。


当該施設に対し調査を行う中で、

・複数のケージで排泄物や飼料の残渣が積み重なっていた
・複数の動物たちに脱羽や脱毛、出血、皮膚炎、膨羽等の症状
・販売個体ごとの情報の表示義務がほぼ満たされていない
・販売に際し必要な情報提供を行っていない
・日本産の野鳥とみられる鳥が飼育されている
・特定外来生物とみられる鳥が飼育されている

等の問題が確認されました。

背中の羽毛が禿げ、地肌が見えています
ニワトリのケージは身動きが取れない程の狭さです
法定6項の情報表示は大変杜撰な状態でした
(写真は性別のみの表示)

動物愛護管理法(以下、動愛法)に係る案件については、管轄の動物愛護管理行政に立入・指導を要望しました。
※残念なことに、現行の動愛法では、第一種動物取扱業(ペットショップなど営利目的の業)の規制の対象動物は哺乳類・鳥類・爬虫類のみとなっており、魚類は含まれません。


日本の野鳥の無許可飼育は鳥獣保護法違反、特定外来生物については外来生物法違反にあたり、警察に通報しました。

特定外来生物のソウシチョウと見られる鳥が
目隠しされた場所で飼育されていました。
微かな鳴き声が聞こえたことで発見に至りました

その後、警察の捜索差押により、対象の動物は押収・他施設へ移送されたと、担当者の方から伺っています。※捜査中のため、種や羽数等の詳細は教えていただけません

担当行政の立入は、要望書の内容を参考にしながらの通常監視という形だったそうです。そして、立入の結果、目立った問題は無いと判断されました。(情報表示等のハード面の違反に関しては追々、という感じでした)

調査時、業者の責任者との対話を通して、
酷い脱針が見られるヨツユビハリネズミの
無償譲渡を受けるに至りました。
獣医師の診療により、重度の皮膚糸状菌症が認められ、
現在も治療を続けています。
行政への要望の際に診断書を添付しましたが、
現在事業所にいない動物は指導対象にならない、
との返答でした
要望時点で発生していた問題も、
立入の際に確認できなければ指導対象になりません

動愛法の曖昧さ

法令には第一種動物取扱業者が守るべき基準が規定されています。しかし、犬・猫以外の動物に関し具体的な飼養基準がないのが現状です。※犬・猫についても充分とは言えません

一例を記載しますと、

●ケージ等の規模

対象動物「個々の動物が自然な姿勢で立ち上がる、横たわる、羽ばたく等の日常的な動作を容易に行うための十分な広さ及び空間を有するものとすること」
犬・猫のみ1頭あたりのケージの規模に関する数値基準がある(各数値は省略します)

運動が困難なケージ等における運動の機会

対象動物「これによる動物のストレスを軽減するために、必要に応じて運動の時間を設けること」
犬・猫のみ「一日当たり三時間以上分離型運動スペース内で自由に運動することができる状態に置くこと」

●長時間連続した展示

対象動物「動物のストレスを軽減するため、必要に応じてその途中において展示を行わない時間を設けること」
犬・猫のみ「休息できる設備に自由に移動できる状態を確保するものとし、その状態を確保することが困難な場合は、展示を行う時間が六時間を超えるごとに、その途中に展示を行わない時間を設けること」

●従業者の員数

対象動物「飼養又は保管をする動物の種類及び数は、飼養施設の構造及び規模並びに動物の飼養又は保管に当たる職員数に見合ったものとすること」
犬・猫のみ従業員1人当たりが飼養保管する犬・猫の頭数に上限がある(各頭数は省略します)


といった、非常にあいまいな表現にとどまっています。そのため、担当行政は具体的な指導を行うことが難しく、善し悪しの判断も職員次第となってきます。

一方で、有無が明確である販売個体ごとの情報表示、帳簿や台帳等に関しても、未だに守れていない業者は少なくありません。

動物たちの苦しみを減らすために

動物取扱業者は、動物の生命と生涯への責任を負い、市民の手本となるべき立場です。法令に順ずることは責務であり、それが困難な場合は業を手放す選択が必要であると思います。(閉業する際には、動物たちへの負担がないよう最大限努めなければなりません)

既存の業者が問題を抱えながら営業を続ける中で、新たな業者が次々と誕生している今。動物取扱業を厳正に取り締まる効力が、法令にあるべきです。

現在、環境省では犬・猫以外の哺乳類、爬虫類の飼養管理基準の策定に向けた検討が行われています。一歩前進ではありますが、動物たちの利益向上に繋がらない、実効性のない形に留まる可能性も大いにあります。

私たち市民の意識を向けていきましょう。

Muiが目指すのは、動物の娯楽利用の廃止です。
今回は動愛法についてご紹介しましたが、法が全てではありません。本事案については、今後も諦めず働きかけを続けていきます。